COVER STORY

行列ができる
介護食①

食する喜びが、よみがえる
「魔法の介護食」開発物語

photos : Taro Imahara
text : Shigeki Jizo, Kanako Ozasa
SAWARABI HAPPY FOOD PROJECT第1弾レシピの「にぎらな寿司」。グルメ界に旋風を巻き起こした分子調理のメソッドを用いて、カウンターで食べる寿司と同等の味を再現している。写真一番手前は、寿司飯のムースにマグロのムース、海苔のジュレ、ワサビのムースをのせ、醤油のジュレを添えた「鉄火巻き」。手前から二番目は「太巻き」で、かんぴょうのムース、椎茸のムース、サーモンのムースの3つが、海苔のジュレと合わさることで太巻きの味になる。
サーモンのムース(手前)と、椎茸のムース(奥)。どちらもテクスチャーは非常になめらかだが、口に含むと元の食材そのままの味。風味も損なわれていない。
「にぎらな寿司」に使用した食材はすべて本物で、真空包装機を使って真空調理をしている。真空調理はテリーヌを調理するために開発された手法で、真空状態に近づくほど沸点が0℃近くまで下がることを利用したもの。調味料を加えた食材のパックを真空状態にすることにより低温で沸騰。浸透率が高まることで味がよくしみこむ、栄養素の破壊が少ない、食材の酸化を抑制するなどの利点がある。
写真手前は、ウニのムースに海苔のジュレとワサビのムースをのせ、醤油のジュレを添えた「ウニ軍艦」。ウニ軍艦の隣は、カニのムースを使った「カニ寿司」。寿司下駄の中央に盛られたガリも、本物を撹拌してジュレ状にしてある。
魚介類はすりつぶすことで表面積が増え、生臭さなどのイヤなにおいが多くなる。そのため下ごしらえの段階で、においのもととなる物質・トリメチルアミンを中和する白麹清酒を加えている。パックには、誰がどの素材をカットしたのか、誰が何を加熱したのかなどがわかるよう、工程ごとに名前を明記。問題が起きたとき、どの工程に原因があったのか、責任の所在を明確にするためだ。
写真上段左より「太巻き(椎茸、サーモン、かんぴょう)」「白身魚(タイ)」「スモークサーモン」、下段左より「ガリのジュレ」「イカの海苔巻き」「サーモン」「マグロ」。
寒天のように見えるが、これはお粥状の寿司飯をさらになめらかに仕上げた寿司飯のムース。見た目の質感は全く異なるが、食すると間違いなく寿司飯であることに驚かされる。
白いプレートに盛りつけた「にぎらな寿司」。フレンチ風にあしらった醤油のジュレがより食欲をそそる。
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